こんにちは。ほのかです。
オーストラリアは今夏です。
こちらでは多くの家がドアの外側にスクリーンドアと呼ばれる網戸を付けていて、
夏はドアを開け放してこのスクリーンだけを閉めて風を通しています。
だから家の中から表がよく見えます。
昨日、家でコンピュータに向かっていると、我が家の愛犬もんがドアの外に向かって唸り始めました。
外に誰か知らない人がいるようです。
表を見るとわが家の真ん前にバンを停めて、トランクの中をゴソゴソしてるオジサンがいました。
誰かと話しているのか、声も聴こえます。
近所の家に作業に来たtradie (トレイディー = tradesman 職人さん) かなと思い、吠えないようにもんを近くに呼んで、そのままその人のことは忘れていました。
それから数時間して、夕方の散歩に出るため戸締りをしようとしたら…。
そのオジサン、まだいるじゃありませんか?!!
しかもまだトランクの中ゴソゴソしてる。
いったい、うちの前で何時間も何をしてるんでしょう?
もんを連れて近づいて行っても振り返りもせず、
一所懸命にトランクの中で何やら物を入れ替えています。
すぐ後ろまで行っても振り向かず。
通りすがりに小声で “Hi” と声をかけてみたけど聴こえなかったのか反応もなし。
怪しい。
でも、うちの前に車を停めているといっても道路の上。
敷地に停めているわけではないので、
オジサンにしてみれば何も悪いことをしているわけではないのです。
不思議なことに、もんもまったく反応しません。
普通なら人にでも犬にでも寄って行くか、
近くに座り込んで振り返ってくれるのを待つかするのに。
何時間も見ているうちに、もんにとってオジサンは風景になってしまったのでしょうか。
話しかけるのもなんだかちょっと怖くて、
気になりながらもそのまま通り過ぎて散歩にでることにしました。
昼間だし、庭の中に入ってくることもないだろうと踏んで。
20分程歩いて戻って来たら…。
まだいる! 変なオジサン。
さっきと同じポジションでごそごそやってます。
やっぱりすっごく怪しい。。。
そのまま通り過ぎて裏口から家に入り、玄関から観察することにしました。
そして中から玄関に出て来てドアを開けてみたら…、オジサンがいない!
でも車はまだそのまま停めてあります。
中に乗ったのでしょうか。
窓に暗いフィルムが貼ってあるので見えません。
しばらく見ていると右手の方からオジサンが帰って来ました。
洗った手を乾かすように両手をパッパと振りながら。
どこで手を洗ってたんだろ?
まさかうちの水道で?!
おじさんは車に乗り込み、しばらーく待ってからエンジンをかけ、バックし始めました。
うちの敷地に乗り上げながらバックしていきます。
そしてドライブウェイをまたいでわが家の敷地の反対側に車を付けると、車を降りたのです。
ここに泊まる気なんだろうか…?
車の前に行き、後ろに行き位置を確認。
もう一度車に乗り込み、今度は斜めに前進して道路の真ん中へ。
再びバック。
斜めに下がり敷地に寄せて行きます。
今度はもう少し下がり、また少し下がり、さらに下がり…。
お隣の敷地の前に駐めると、お隣さんの敷地に入って行ったのです。
なんだ、お隣さんのお友だちだったんだ…。
ふーっ。要らぬ緊張をしてしまいました(笑)。
そういえば一時期お隣さんに住んでいた彼らの友人で、私たちが秘かに「歌うおじさん」と呼んでいた人がいたのですが、この人が最初に来たときもこんな感じだったのを思い出しました。
いつも下を向いていて、目を合わさない。
だからなかなかあいさつもできない。
ときに何時間も車の中をごそごそしたり、ぶつぶつひとり言を言ったりしていました。
でもひとりで家にいるときは大きな声で歌っているのです。
カンツォーネみたいなのを。
家主さんたちがいるときは決して歌いません。
私たちに聴こえているなどとはきっとこれっぽちも思っていなかったに違いありません。
大きくてとても通る声でしたが上手と呼ぶにはちょっと苦しいその歌を聞くたびに、「おじさん元気なんだね」と私たちは確認し合ったものです。
歌うおじさんは少しずつ殻を抜け出し、挨拶をしてくれるようになり、
そのうち外で楽し気に携帯電話で話をする姿を見るようになります。
家の人の邪魔にならないようにか、聞かれないためか、表に出て来て電話するのです。
でも前庭で草むしりをしている私たちの数メートル先で、
ポストに座って話す彼の声は私たちには丸聞こえです。
そんなことはまるで気にならないというように大きな声で朗らかに話しています。
最初は離れて暮らしている娘さんか誰かと話しているんだろうな、と思っていました。
私には「耳を閉じる」という芸当があって、きちんと聞こうとしなければ他のことに集中するにつれ全然聞こえなくなるのです
ところがあるとき、なぜかワンフレーズだけ耳に入って来てしまったのです。
「おまえ、俺をわかってないな」
そういって楽しそうに笑ったのです。
その瞬間に相手は子供でないとわかり、同時に彼が今幸せになりつつあることを私は学びました。
来たばかりの頃は辛い頃だったんだきっと。
何にしても幸せになってくれてよかった。明るくなってよかった。
それからしばらくして彼は引っ越していきました。
今でもときどき遊びに来たり、お隣さんが留守をするときは留守番に来たりしていますが。
ちゃんと挨拶してくれますよ。
今日、下を向いてお隣に入って行ったオジサンも
そのうち挨拶してくれるようになるといいな、と思ったのでした。
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